読者のご質問

「トランプ大統領が日米安保条約に不満を表明していますが、どこにポイントまたは問題点がありますか?」(40代 主婦)


回答者 理事長 坂上芳洋

お尋ね有難うございます。

日本の行く末を案じられることからと推察し、質問された方の関心に敬意を表する次第です。


本来ならば日米安保条約(正式には1960年(昭和35年)に改訂締結された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約と呼称されます。)の締結の背景、目的、日米両国が問題とする認識する内容から述べるべきですが、これは次回まとめてお示しすることとして、今回は、ご質問内容に焦点を当てることとします。

発端は、Bloombergが6月25日「トランプ大統領が最近、日本との安全保障条約を破棄する可能性についての考えを側近にもらしたとする」記事です。URLは、次のとおりです。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-06-25/PTMUOE6TTDS801

米政府筋が意図的に漏らしたものと考えられなくもありませんが、これは予想されたことでした。

結論を申し上げると、トランプ大統領が側近にこれらの話を漏らしたとしても、それが直ちに日米安保条約の破棄という現実に結びつくことはないでしょう。

ただ、参議院選挙後の日米通商問題に関し、何らかの圧力がかかると考えられます。

トランプ氏が問題にしているのは、日米安保条約の片務性(日本が攻撃された場合米国が支援しますが、米国が支援された場合日本が米国を支援することが義務づけられていない)なのです。ここに不満を漏らしているのです。

また、大統領選挙直前にも、在日米軍駐留経費についても日本が全額を負担すべきと主張していましたが、さすがに日本が他国に比べて突出した負担をしていることがわかり最近では言わなくなっていました。

今回、トランプ氏が側近に「日米安保破棄の可能性」を漏らした根拠はトランプ氏のアメリカファーストを徹底させようとするビジネスマンとしての論理から端を発しているわけです。

在日米国大使館筋からの情報によりますと、今回のトランプ氏の発言は決して日米安保条約の改定又は破棄を目論んだわけでなく、在日米軍の駐留費の更なる負担増を狙うトランプ氏一流の交渉術であるということです。

それでは読者の皆様、次回、「日米安保条約の行く末を見越した日本の安全保障の在り方」でまたお会いしましょう。

令和元年7月7日

代表理事 坂上 芳洋

ご参考

以下は、今回のトランプ大統領の発言を受けて、私が、安倍政権の閣僚および自民党国会議員に対して我が国の国家戦略を提言するためにまとめたものです。

読者の皆様のご参考に供していただければ幸いです。

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自国の安全保障は、自国が責任をもって担うということは世界の常識です。かっての旧ソ連の脅威、現中国の露骨な防諜主義に何ら十分な計画も予算も充当しないでいざとなったら米国が守ってくれるとの期待に長年依存してきた歴代政府の怠慢と国民の油断こそが責められるべきです。

今回のトランプ氏の発言は、我が国の安全保障に本気に立ち向かうべき機会ととらえた方が得策です。

では何をすべきかですが、一挙に自立防衛を図るべく自衛隊の人員装備を拡大、戦略抑止兵器を保有するという短絡的な政策は実現できそうにありません。先ず、現日米安保体制を維持すべく万全の策を講じることです。

それは;

・日本国内については、日米安保条約の重要性を国民に理解させることであり、政府与党、地方自治体、教育機関、並びに当財団のようなシンクタンクからの啓蒙を与えることが重要であります。我々(財)日本総合戦略研究所もしっかりとしたキャンペーンを実施する予定です。

太平洋戦争後、連合国から提示された新憲法によりいわゆる独立国として自国の防衛に関して基本となる根拠を無にされ、我が国が何も行動に移せないと判断し、周辺諸国(中国、韓国、北朝鮮)が無理難題を押し付けてきているのが現状です。

押し付けられた憲法を金科玉条のごとく許容するのではなく適正な状態に改正する必要があります。(かっての枢軸国で憲法を改正していないのは日本だけで、いかに農耕民族として従順性を維持しているのか又は外圧による野党、メディアが洗脳されているのか)日本国民としての独立心を放棄している感があります。

・対国際世論については、太平洋戦争前の様に国際的に孤立しないことが必須です。日本が攻撃を受けた場合、諸外国、特に米国にとって直接大きな影響があり不利益を被ることが予想され、我が国を防衛をするに値する国であることを米国民に認識させる米国内世論を醸成することを普段から働きかける必要があります。いわゆる経済文化・安全保障運命共同体意識です。

・米国に対しては、上記は基本ですが、先ず、在日米軍駐留軍経費は米軍が駐留している他の国に比し突出した額と割合を日本政府が負担している事をトランプ氏に認識させる必要があります。

次に集団的自衛権については、日本の各政権に応じてその場しのぎの解釈を下してきましたが、日米同盟を確固たるものにするよう解釈を提示することです。

次に日米安保条約の適用範囲の明確化が必要です。これは、尖閣列島、竹島、北方領土が定期用範囲になるか重要な案件です。なお、日米通商関係を向上させることから米国の言いなりになり十分な判断をしないで高額な防衛装備品を購入してはなりません。

以上は、当面の対処ですが、米国に共和党政権が継続するかぎり、駐留米軍の撤退並びに日米安保条約の破棄は、将来、生起する事を考えなければなりません。

日米安保条約の破棄によって日本が取るべき選択は、

①何もしない、

②米国の他に片務性を肩代わりする国と連携する、

③憲法を改正し自衛隊を防衛軍として認め増強する

であり、

①及び②は考えられないので③が取りうる選択ですがそのためには、次の条件を満足させる施策を国を挙げて推進しなければなりません。

それは、国際的に孤立しない可能な限り等方位経済外交文化活動態勢を維持し富国強化策を図ります。そのためには金融に経済活動の重点をおくのではなく、加工製造業にも重点とする方向に導くことが必要です。政府は技術立国と豪語していますが、新しい技術が生まれるとそれを押さえつけようとする同族意識を自ら払しょくしないと世界の先頭を走る技術立国にはなれません。

防衛力については自主防衛にために大幅に強化することは根本的解決策ではなく、防衛軍又は防衛隊(憲法改正による改称)の兵力を効果的に運用するために災害救助隊を充実させ、総合防衛力を飛躍的に向上させます。憲法には、自国の生命財産防衛並びに国連の要請による国際平和活動のみに防衛活動を行うを明示します。なお、防衛装備品の国内開発及び核兵器以外の戦略抑止兵器の開発保有を推進します。

国内外に政治の延長による防衛力を使用しないとするも、事があれば果敢に運用できる意思を示すとともに情報収集体制を維持向上させます。


以上。

令和元年7月7日

(財)日本総合戦略研究所

代表理事 坂上 芳洋